森田童子の歌

March 4, 2008

『G線上にひとり』

夏草(なつくさ)の上に ねそべって
まぶしい孤独な 夢がひろがる

ひとり目ざめて あくびして 涙ふいた
夏の空は ヒコーキ雲

何もいわない 六月の空は
ぼくの好きな 水色(みずいろ)です

暗闇(くらやみ)よ ぼくを呼べ 遠い記憶(きおく)へ
あなたの ところへ ぼくをつれてって

やさしい風は ぼくをなでて
ひとりは とても いい気持

夏草の上に ねそべって
いま ぼくは 死にたいと思う

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『ピラビタール』

悲しい時は ほほをよせて
淋しい時は 胸を合わせて
ただふたりは 息をこらえて
虫の音を 聞いていました
そんな淋しい 夏の終わりでした

  悲しい時は ほほをよせて
  淋しい時は 胸を合わせて
  ただふたりは 目を閉じて
  眠るのを 待っていました
  そんな淋しい 愛の形でした

悲しい時は ほほをよせて
淋しい時は 胸を合わせて
ただふたりは 夜のふちへ
ふるえて旅立つのでした
そんな淋しい ふたりの始まりでした 

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『サナトリウム』

漱石の本 投げ出して くちづけした
窓辺の水の花 鮮やかに
ふるえて あなたの ワンピース
白地に花が浮き出して
とっても 淡くて きれいネ

   (語り)
   結核前夜のように 僕はよく同じ夢を見ます
   それで 僕は汗ばみっぱなし
   だから
   僕の左の肺の中は水でいっぱいです
   もうすぐ
   僕の肺の中に
   真っ赤な花が 咲くはずです 
   
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『ふるえているネ』

ぼくの
てのひらで
君は
顫(ふる)えているネ
ぼくの
やさしい
手に中で
このまま 君は 死ねばいい
飛べない ぼくの あげは蝶(ちゅう) 

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『ラスト・ワルツ』

美しき明日に
ついても語れず
ただ あなたと
しばし この時よ
すべてが なつかしき
この時よ
すべてが終る
この夜に
せめて 最後に ラスト・ワルツ

この暗き部屋の
窓から
街の灯は まばゆく
自由が 見える
すべてが 遠き
この時よ
このまま 若い日が
終るのなら
せめて 最後に ラスト・ワルツ

美しき明日に
ついても語れず
ただ あなたと
un deux trois
すべてが帰らぬ
un deux trois
すべてが 終る
un deux trois
せめて 最後に ラスト・ワルツ

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『さよならぼくのともだち』

長い髪をかきあげて ひげをはやした やさしい君は
ひとりぼっちで ひとごみを 歩いていたネ
さよなら ぼくの ともだち

夏休みのキャンパス通り コーヒーショップのウィンドの向こう
君はやさしい まなざしで ぼくを呼んでいたネ
さよなら ぼくの ともだち

息がつまる夏の部屋で 窓もドアも閉めきって
君は汗をかいて ねむっていたネ
さよなら ぼくの ともだち

行ったこともないメキシコの話を 君はクスリが回ってくると
いつもぼくにくり返し 話してくれたネ
さよなら ぼくの ともだち

仲間がパクられた日曜の朝 雨の中をゆがんで走る
やさしい君はそれから 変わってしまったネ
さよなら ぼくの ともだち

ひげをはやした無口な君が 帰ってこなくなった部屋に
君のハブラシとコートが 残っているヨ
さよなら ぼくの ともだち

弱虫でやさしい静かな君を ぼくはとっても好きだった
君はぼくのいいともだちだった
さよなら ぼくの ともだち
さよなら ぼくの ともだち

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『今日は奇跡の朝です』

不幸な時代に僕たちは目覚めた
八月の海はどこまでも青い
今日は気持ちのいい朝です

砂浜に人は黒い影を落とす
まぶしい陽射しに目眩する
今日は気持ちのいい朝です

白い雲が流れる
もうすぐ夕立
僕たちは奇跡を待っています
今日は奇跡の朝です

八月の海は悲しみいっぱいに
いま聖母マリアが浮上する
いま聖母マリアが浮上する
いま聖母マリアが浮上する

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『伝書鳩』

目にしみるぞ
青い空
淋しいぞ
白い雲
ぼくの鳩小屋に
伝書鳩が帰ってこない

ウウウウウー ウウウウウー
もうすぐ ぼくの背中に
羽根(はね)が はえるぞ

アアアアアー アアアアアー
朝の街に
ぼくの 白い カイキンシャツが飛(と)ぶ

母よぼくの 鳩を撃(う)て
母よぼくの 鳩を撃て
ウウウウウー ウウウウウー
ウウウウウー ウウウウウー
ウウウウウー ウウウウウー
ウウウウウー ウウウウウー 

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『君は変わっちゃったネ』

久しぶりだネ あなたは元気ですか
とても大人びて
そんなふうに淋しそうに
笑うあなたを 見ていると
言葉が とぎれてしまう
とても長い時が 過ぎたのネ

久し振りだネ ぼくは相変わらず
甘い夢を追っています そんなぼくを
あなたは 子供っぽく
見えるかしら
とても長い時が 過ぎたのネ

久し振りだネ 本当に久しぶりだネ
淋しかったぼくは
いまでもやさしいあなたの
そばにいると涙が
こぼれてしまう
とても長い時が 過ぎたのネ

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『ぼくが君の思い出になってあげよう』

君はいつか ぼくから離れて 
ひとりで 大人になってゆくのさ
ほんの少し 淋しくても 君は 都会の中で 
ひとりで やってゆけるさ

君が忘れた 砂ぼこりの風が吹く 
この街に ぼくはいる
淋しかったら いつでも 帰っておいで 
ぼくは 待っていてあげよう

年上のぼくが 淋しいと云ったら 
君はこのぼくを 笑うかな
さびれたこの街で もう若くはない ぼくは 
君の 思い出になってあげよう 

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『君と淋しい風になる』

明日になれば どのように
ぼくは 君を愛すだろう
時は 短かく ぼくたちは もっと短かい

形(かたち)のない愛は いつもぼくを すりぬけて
いつか ふたりは 淋しい 風になる

明日になれば ぼくたちは
ひとり どうして 生きるだろう
君が いない この朝は もっと淋しい

形のない愛は いつもぼくを すりぬけて
いつか ひとりで 淋しい 風になる

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『哀悼夜曲』

目覚めては なつかしい 美しき日々よ
目をふせて 悲しい 美しき日々よ
歌っても 帰らぬ 若き日々よ
深き眠りのうちに
時よ 終れ

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『地平線(ちへいせん)』

地平線の向(む)こうには 
お母さんと同じ優しさがある  
だから僕はいつも 
地平線の向こうで死にたいと思います

地平線の向こうには 
僕と同じ寂しさがある  
だから地平線よ 
僕が目を覚まさないうちに 
遠くまで連れて行って

地平線の向こうには 
夏の草花が 
咲き乱れています  
だから僕はいつも 
君の胸に抱かれて眠りたいと思います

地平線の向こうには 
血よりも赤い夕焼けがある  
だから傷ついた 
戦士(せんし)のように故郷を思うのです

地平線の向こうには 
愛よりも深い海がある  
だから僕はいつも 
地平線の向こうに沈んで行きたい


地平線の向こうには 
お母さんと同じ優しさがある
だから僕はいつも 
地平線の向こうで死にたいと思います

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『まぶしい夏』

玉川上水沿いいに歩くと
君の小さなアパートがあった
夏には窓に竹(たけ)の葉(は)がゆれて
太宰の好きな君は 睡眠薬飲んだ
暑い陽だまりの中 君はいつまでも
汗(あせ)をかいて眠った

あじさいの花よりあざやかに
季節の終りの蝉(せみ)が鳴(な)いた
君から借りた 太宰の本は
淋しいかたみになりました
ぼくは汗ばんだ なつかしいあの頃の
景色(けしき)をよく覚えている

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『みんな夢でありました』

あの時代は何だったのですか あのときめきは何だったのですか
みんな夢でありました みんな夢でありました
悲しいほどに ありのままの君とぼくが ここにいる

ぼくはもう語らないだろう ぼくもう歌わないだろう
みんな夢でありました みんな夢でありました
何もないけど ただひたむきな ぼくたちが立っていた

キャンパス通りが炎と燃えた あれは雨の金曜日
みんな夢でありました みんな夢でありました
目を閉じれば 悲しい君の笑い顔が 見えます

河岸の向うにぼくたちがいる 風の中にぼくたちがいる
みんな夢でありました みんな夢でありました
もう一度やりなおすなら どんな生き方が あるだろうか 

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『ぼくたちの失敗』

春のこもれ陽の中で 君のやさしさに
うもれていたぼくは 弱虫だったんだヨネ

君と話し疲れて いつか 黙りこんだ
ストーブ代わりの電熱器 赤く燃えていた

地下のジャズ喫茶 変れないぼくたちがいた
悪い夢のように 時がなぜてゆく

ぼくがひとりになった 部屋に君の好きな
チャーリー パーカー 見つけたヨ
ぼくを忘れたカナ

だめになったぼくを見て
君もびっくりしただろう
あのこはまだ元気かい 昔の話だネ

春のこもれ陽の中で 君のやさしさに
うもれていたぼくは 弱虫だったんだヨネ

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『孤立無援の唄』

ネエ何か おもしろいことないかなァ 貸本屋の のき下で雨やどり
君は むずかしい顔して 立読みしながら 本を盗んだ
ぼくの 自転車の うしろで 孤立無援の思想を読んだ

春になったら 就職するかなァ 壁に向かって 逆立ちして 笑った
机の上の 高橋和己は おこった顔して さかさに見える
どうして いきていいのか わからぬ ふたりが 畳の上にねそべっている

ネエ何か アルバイトないかなァ 君はモノクロ テレビのプロレス見てる
ふたりは いつも負け役みたい でんぐり返って 地獄がためだネ
窓ガラス あけると 無難にやれと 世の中が顔をしかめてる

ネエどうにか やってゆけるかなァ タッグマッチの 君がいないから
ぼくは 空を飛べない 年老いた スーパーマンみたい
どうして 生きていいのか 解らぬぼくが 畳の上にねそべっている

   葉書き ありがとう
   君といた時間が 長すぎたのかもしれません
   ぼくは もう少し こうしていたい気持ちです
   新しい背広を着た 真面目な君を見るのは 少し恐い気もしてます
   でも 近いうちに 君に逢いたいと思います

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『セルロイドの少女』

すべるように 十七才のミドリちゃんは 
決死の綱渡り 金粉塗った まぶたが
ふるえている

はるが希望を 見つめて ミドリちゃんは
青春逆立ち 宙返り 淋しいかっさいの中で
ミドリちゃんは 笑った

七色のライトが 夢の家族を呼ぶ
ああ、淋しい家族合わせ 火を吹く 弟
母の水芸(みずげい)

一輪車(いちりんしゃ)で 十七才のミドリちゃんは
孤独(こどく)の荒野(こうや) ひだ走る
がんばれ がんばれ
ああ、家族合わせ

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

「ニューヨークからの手紙」

(なみだに にじんだ しがつのそらよ)
涙に にじんだ 四月の空よ
(さみしききょじん にゅうようく)
淋しき巨人 ニューヨーク

(こえをこらえて わたしはあてのない)
声をこらえて 私はあてのない
(ながいてがみ きょうもかきます)
長い手紙 今日も書きます
(きせつのかぜが ふいたらどうぞ)
季節の風が 吹いたらどうぞ
(つたえてほしい)
伝えてほしい

(ゆれるなのはな こいびとともたち)
揺れる菜の花 恋人友達
(どうぞ わたしを わすれてほしい)
どうぞ 私を 忘れてほしい

(ふかい ゆううつの さぶ・うぇい)
深い 憂鬱の サブ・ウェイ
(ふゆのうみ にゅうようく)
冬の海 ニューヨーク
(ひとり わたしの しろくはくいき)
ひとり 私の 白くはく息
うつろに  とても
(さみしい きせつのかぜが)
淋しい 季節の風が
(ふいたらどうぞ)
吹いたらどうぞ
(つたえてほしい)
伝えてほしい

(ゆれるなのはな こいびとともたち)
揺れる菜の花 恋人友達
(どうぞ わたしを わすれてほしい)
どうぞ 私を 忘れてほしい

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『早春にて』

君の好きな強い酒
あびるほどに 飲み明かした
長い夜があった
淋しく二人眠った 始発の電車
ただ陽射しだけが まぶしく
話す言葉もなかった
悲しく 色あせてゆく 青春たち

 黒いトックリのセーターと交換した
 君の黄色のシャツを ぼくはまだもっています
 もうすぐそこに夏がきています
 君は元気ですか

君の好きな黒いセーター
故郷へ帰る後姿
いつまでも見ていた
肩をたたいてただ友情だけは
信じると 淋しく笑った
君の顔 おぼえてる
悲しく 色あせていく 青春たち

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『春爛漫』

桜の花びら
踏んで 歩いた
君と肩くんで 熱くこみあげた
春よ 春に 春は 春の
春は遠く
春よ 春に 春は 春の
春は遠く
悲しみは 水色にとけて
青い空の 青さの中へ
青く 青き 青の 青い
青さの中へ
青く 青き 青の 青い
青さの中へ
哀しい夢 花吹雪 水の流れ
ンーン ンーン
春爛漫

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『たとえば ぼくが死んだら』

たとえば ぼくが死んだら
そっと忘れてほしい
淋しい時は ぼくの好きな
菜の花畑で泣いてくれ

たとえば 眠れぬ夜は
暗い海辺の窓から
ぼくの名前を 風にのせて
そっと呼んでくれ

たとえば 雨にうたれて
杏子の花が散っている
故郷をすてた ぼくが上着の
衿を立てて歩いている

たとえば マッチをすっては
悲(かな)しみをもやす この ぼくの
涙もろい 想いは 何だろう

たとえば ぼくが死んだら
そっと忘れてほしい
淋しい時は ぼくの好きな
菜の花畑で泣いてくれ

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『海を見たいと思った』

夜汽車にて
ふと目をさました
まばらな乗客 暗い電燈
窓ガラスに もう若くはない
ぼくの顔を見た

今すぐ海を 今すぐ海を
見たいと思った

   行く先(さき)のない
   旅(たび)の果(は)てに 
   ひとり砂浜(すなはま)にねそべって
   飲めない酒を飲んだ
   泣いてみようとしたが
   泣けなかった

ある日 ぼくの
コートの型(かた)が
もう古いことを 知った
ひとりで 生きてきたことの
寂しさに 気づいた 
行き止まりの海で 行き止まりの海で
ぼくは振り返る

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『淋しい素描』

浅き夢みし
人の世は
酔いを重ねて
ただ 悲し
泣くも
笑うも
ただ ひとり
いつか 畳に うつふして
しばし 浅き眠り 春の夜

悲しき想い
あとにおかしく
死ぬことやめて
帰りきたり
暗き
部屋に
雨の音
眼の上に 腕ふせば
しばし 浅き眠り 春の夜

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『淋しい雲』

いつも君のあとから 長い影をふんで
いつも君のあとから ついてゆきたい

どこへ行くあてもなく ぼくたちは
よく歩いたよネ
夏の街の夕暮れ時は
泣きたいほど淋しくて
ぼくひとりでは とてもやって
ゆけそうもないヨ

君の好きな ミセスカーマイケル
僕もいいと思うヨ
夏休みが 終わったら もう逢えなくなるネ
そうしたら時々 なつかしいミセスの
話をしようヨ
夏の街の夕暮れ時は
泣きたいほど淋しくて
君ひとりでは とてもやって
ゆけそうもないから

どこへ行くあてもなく ぼくたちは
よく歩いたよネ
夏の街の夕暮れ時は
泣きたいほど淋しくて
ぼくひとりでは とてもやって
ゆけそうもないヨ

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『球根栽培の唄』

球根栽培の花が
咲きました
孤立無援のお前のように
机のすみで 咲きました

死んでしまえばいいと言い
酒を飲む
笑うお前の横顔は
どこかあの花に
似ています

   「語り」
   淋しいページの音をめくり
   長い思想のむなしさを読む
   ぼくは どこまでも
   ぼくであろうとし
   ぼくが ぼくで
   ぼくであろうとし
   ぼくはどこまでも
   ぼくであろうとし
   ぼくが ぼくで
   ぼくであろうとし
   やがて ぼくはモデルガン改造に
   熱中していた 
   もうすぐ憎愛に変わるだろう
   ぼくの孤独な情念は
   壁を突き通す一発の弾丸に
   なるはずだった---。
   
ガリ版刷りのアジビラが
風に舞う
赤いヘルメットのお前が
ぼくを見つけて
手を振った
球根栽培の本を
知っていますか
孤立無援のいのちがもえて
花火のように咲きます

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『男のくせに泣いてくれた』

夢のように はかなく
私の記憶(きおく)は
広告(こうこく)写真みたいに
悲(かな)しく通(とお)りすぎてゆく
淋しかった 私の話を聞いて
男のくせに 泣いてくれた

君と涙が乾(かわ)くまで
肩(かた)抱(て)きあって眠(ね)た
やさしい時の流れはつかのまに
いつか 淋しい 季節の風を
ほほに 知っていた

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『たんごの節句』

しょうぶ湯わかして 弟とがまんくらべ
窓の向こうに
一番星見つけた
思わずよみがえる幼い日のせつない想い
あざやか色の 吹流し
アーア アーア
あやめ 五月雨 たんごの節句

雨があがって
弟と川の中
やまめを 追って
夏虫鳴いて もう日暮れ
思わずよみがえる幼い日のせつない想い
過ぎた夏は 涙色
アーア アーア
あやめ 五月雨 たんごの節句

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『終曲の為に第三番「友への手紙」』

ぼくが愛したともだちの
そして模型飛行機の
工作用ナイフで切った
指先の小さな傷あとを
ぼくはいつまでも愛した

ぼくたちのうちなるやさしさの
朝明けのアスファルトの上に
死んだ鳩の首すじの
やわらかなあたたかさよ

今 ぼくははるか
死の意味を飛ぶ
さよなら ぼくを愛さなかったともだちへ

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『菜の花あかり』

春はやさしい
今宵は満月
短い命の
あなたは 十七
淋しいあなたと
どこへ行きましょう

夜風にゆれて
闇の夜に
淋しいあなたと
どこへ行きましょう

春はやさしい
菜の花畑
あたり一面
菜の花あかり 

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『蒸留反応』

長いマフラー
ふたりで 巻いた
君のかじかんだ
小さな手
ポケットの中で
冷たくて いい気持
雪よ降れ んーん
雪よ降れ んーん

去年の夏の
君の Tシャツみたい
白一色おおわれて
どこまでも
ぼくは 目を細めて
まぶしいヨ いい気持
雪よ降れ んーん
雪よ降れ んーん

白い向うへ
もっと白く
君のまつ毛に
雪が降って重たそう
ぼくの 口唇で
とかしてあげよう いい気持
雪よ降れ んーん
雪よ降れ んーん

ふたりの足跡
雪が消してゆく
ぼくが冷たくて
きみがつめたくて
ふたりの歯が カタカタ鳴って
おかしいネ いい気持
雪よ降れ んーん
雪よ降れ んーん

ぼくときみは
雪にうもれて
もう見えないヨ
白一色世界
ああきれいだネ
きれいだネ いい気持
雪よ降れ んーん
雪よ降れ んーん

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『蒼き夜は』

春は まぼろし
ふたりは 悲しい夢の中
君と いっそこのまま
だめになって しまおうか
もどろうか
もどろうか
それとも もう少し
このまま 君と眠ろうか

春は まぼろし
やさしいばかりの今夜の気持
君は ぼくのひざまくら
眠れそうかい
眠れそうかい
眠れそうかい
それとも このまま
君と死んでしまおうか

春は まぼろし
淋しいだけの ふたりなら
何にも 云わずに
せめて 君と軽やかに
踊ろうヨ
踊ろうヨ
それとも このまま
君と落ちてしまおうか
君と落ちてしまおうか

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『ぼくを見かけませんでしたか』 

海へ行くには どう行くのですか 
それから ぼくは どう生きるんですか

いつか 来た道 通りぬけて 
ぼくは 青春の 終りを さまよう
立ち止まると 暗い向こうに 海の音が聞こえる

ゆきかう電車の 窓越しに 
真新しい セビロの ぼくを 見かけませんでしたか

  風に 一面にひろがる麦畑が 波のようにうねって 
  まるで 海のようです
  ぼくは いまひとり 北上川のほとり 旅の途上にいる

なくしたものは なんですか 
目覚めた朝に 何を 想うんですか
から松林 ぬけて 風の音 遠く 
ぼくの迷える 旅の終わりに
人ごみに 大人になれない ぼくがいる

ゆきかう電車の 窓越しに 
真新しい セビロの ぼくを 見かけませんでしたか 

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『ぼくを見つけてくれないかなァ』

夢さりし後に
何もない ぼくが
ただポケットに 手を入れて立っているヨ
誰か ぼくを見つけて くれないかなァ----
ひとりで埋もれていく このぼくを
見つけたら 声をかけて
くれるかなァ

覚えていますか
今日は 雨が降って
君の好きな あじさいの花きれいです。
誰か ぼくを見つけて くれないかなァ----
いつも バカな夢を見てるぼくを
雨に濡れています
ぼくに傘を貸して下さい

小さな生き方を
少しづつ覚えて
きたような そんな気がしています
誰か ぼくを見つけて くれないかなァ----
君が ぼくを見つけて くれないかなァ----
ぼくを見て
君は 笑ってくれるかしら 

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『ぼくと観光バスに乗ってみませんか』

もしも君が 疲れてしまったのなら
ぼくと観光バスに 乗ってみませんか
色あざやかな 新しいシャツを着(き)て
季節はずれの ぼくの街は なんにもないけれど
君に 話ぐらいはしてあげられる

  ぼくの 小さな海辺の観光地に もうすぐ冬がきます
  君も一度気がむいたら たずねて下さい  雅兄

もしも君が すべていやになったのなら
ぼくと観光バスに 乗ってみませんか
君と 今夜が最後なら トランジスターラジオから流(なが)れる
あのドゥーユワナダンスで 昔みたいに うかれてみたい
あのドゥーユワナダンスで 昔みたいに うかれてみたい 

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『逆光線』

淋しい ぼくの部屋に
静かに 夏が来る
汗を流して ぼくは
青い空を 見る
夏は淋しい 白いランニングシャツ
安全カミソリがやさしく
ぼくの手首を走る
静かに ぼくの命は ふきだして
真夏の淋しい 蒼さの中で
ぼくはひとり
真夏の淋しい 蒼さの中で
ぼくはひとり
やさしく発狂する
ウーン ウーン ウーン
ウーン ウーン ウーン
	
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『センチメンタル通り』

いつかこの町捨てる時 
君は一人で出てゆけるかい 
みんな夕方(ゆうがた)になると 
集(あつ)まった映画館
すっかり寂れて しまったけれど

今夜は久しぶりに 
君とロックハドソンの
ジャイアンツでも 
しみじみ見たい気持ちだね 

いつかこの町捨てる時 
君は笑(わらう)って出てゆけるかい
思いで多すぎるこの町を
捨てることが出来るかな

とってもこの店 
淋しくなったけど

今夜はあの頃 懐かしんで
明るい目抜き通り 
しみじみ歩きたい気持ちだね

いつかこの町捨てる時 
君は涙見せずにゆけるかい
朝の始発の汽車で 
君もあのこと行くのかい

今夜は何にも言わないで 
昔みたいに酔ってダンスを踊ろうよ
青春ってやつの お別れに

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『雨のクロール』

夏の川辺に 二人は今日別れる
ぼくは黙って 草笛吹いた
ウフフフ〜 ウフフフ〜

君は花がらのワンピースおいて
静かに涙色のまぶしい水の中
ウフフフ〜 ウフフフ〜

雨に君の泳ぐクロールとってもきれいネ
雨に君の泳ぐクロールとってもきれいネ

夏がめぐりめぐってもぼくはもう決して
泳がないだろう

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『風さわぐ原地の中に』

風さわぐ 原地の中に
俺とお前が
涙ぐんで 立ってるヨ
まるで 記念写真みたいにサ
なつかしい故郷 目の前にして
丁度
ひと昔前と おんなじで
お前十七 俺十九の春だった

あばよ チマよ
俺とお前が
街から街を 流れたヨ
都会の夜の まぶしさに
眠るのも忘れて 遊んだヨ
丁度
すっからかんの文無しは
お前十七 俺十九の春だった

  俺とお前は 幼なじみのように
  いつもふたりだった
  二つ年下のお前は
  とてつもないことを 考えついては
  俺を 有頂天にした
  そして
  まわりの歯車と 合わない
  俺たちに 気づいた時
  二人はもう 若くはなかった
  今 もう 二人でしかやってゆけない
  俺とお前が ここにいる

帰れるものか あの娘のいる街へ
お前 地道にやれるというが
気ままに 生きた俺とお前が
帰れるはずが ないじゃないか
丁度
根無し草の泣き虫は
お前十七 俺十九の春だった

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

『驟雨(にわかあめ)』

ぼくの水色のレインコート
風に鳴って 悲しみうたう
淋しさだけを かみしめて
君の思い出 ほほに 冷たい

涙まじりの北風は
遠く春を呼んで
君のいない街に ひとりぼっち にわか雨

ぼくの水色のレインコート
色あせて 思い出遠い
ぼくはただめぐりめぐる
淋しい季節を ひとり 歩いた

哀しみ覚えて風の中
タバコの煙り淋しい
君のいない街に ひとりぼっち にわか雨

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

Last modified: Tue, Mar 4, 2008, 4:21 PM CST